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フローマインド13    好きを大事にする生き方

2022.04.22

好きを大事にする生き方  (辻秀一メソッドより)


■             なぜ大人は好きと言えないのか

今日は「好きを大事にする」というテーマでお話をしたいと思います。

好きを大事にするライフスキルは、どんな人でも割と気軽に自分の心を変える、切り替える、自分の心を外側から切り離してマネジメントするために使えるライフスキルとして非常に便利です。

 

認知の脳は、「好き」よりも「得意」を考えるようになります。
得意は必ず相対的で、「比較思考」の中から生まれます。我々は、小学校に入るころからこの認知のワールドに入り始めるがために、「好きを大事にする」ということが極めてできなくなります。


なぜなら、認知によって得意を形成する社会の中にぶち込まれていくからです。

 

「算数が好き」って言っても、「おまえ、計算できないから駄目でしょ」って言われますよね。「僕、国語好き」って言っても、「漢字できないでしょ」って言われるでしょう。

「僕、体育好き」って言っても、「おまえ、走るの遅いくせに何言ってるんだ」とか、「体育好きなら、まず逆上がりできるようにしろよ」って言われてしまいます。
好きっていうことが学校で評価されたことがないです残念ながら。


 

「算数好きなので優がつく」とかないです。「国語好きなので、ABCのAで評価される」っていうことがないです。好きっていうことは我々の心にとってすごく重要な感情でもあり、好きなことを考えるっていうことがすごくライフスキルの中でも重要にもかかわらず非常に軽視されます。

 

軽視されるというか、日常の生活に「好き」があっても役に立たないとか、好きは日常の認知の世界とは別なところで、ただ「気分転換するためにあるものだ」といって、好きがだんだん端に追いやられます。好きが人生のど真ん中にあるっていうことはだんだんなくなります

 

「仕事を好きになれ」というふうに私は言ってるわけではなく、好きっていうことを考える日々、考えるあなたが、自分の人生のど真ん中にいてほしいということを、声を大にして言いたいと思います。

 

認知の世界に任せておくと、僕らは絶対的な好きを離れて、相対的な得意な方向に行きがちになります。

 

これは私がいつもお話しする事例ですけど、私はバスケットボールがとても大好きです。

好きだっていうのは絶対的なので、どんなことがあっても私は好きです。

好きに定義はない。だからフローですね。好きなことを考えると…。

例えば、バスケが好きな理由をいくら述べたところで、「好きだから好きなんです」っていう感じです。好きのいいところは、「人とシェアできるところ」です。

 

人の好きな話を聞いても人は腹が立たないですけど、人の得意な話をされると、「ああ、それがどうしたの」ってなります。

 

例えばです。僕がJリーガー100人を前に、「バスケ好きです」っていうことを熱弁します。Jリーガーは、嫌な気分にならないです。

「先生、ほんと、バスケ好きなんですね。俺たちはサッカー、先生に負けないくらい好きなんですけど」って言って結局握手ができます。NBAの選手が目の前に100人います。NBAの選手を前に、「僕はバスケ、大好きなんです」って熱弁をします。NBAの選手は、「ドクター、ほんとバスケ好きなんですね。俺たちも先生に負けないぐらいバスケ好きなんです」って、また握手するかハグできます。

 

でも、NBAの選手100人いる目の前に、「僕は、バスケ得意なんです」って絶対言えないです。「バスケやってた」っていうことすら僕は黙ります。つまり得意は、相手によって制限を受けます。もうそこにとらわれが起こるし揺らぎが起こる。

すなわち、自分の自由を好きという感覚で解放されてフローになるっていうことが、得意っていう会話ではしにくいんです。

 

■       「好き」と得意は似て非なるもの

「得意だから好きだ」って思ってる人がいます。これは本当の好きではありません。

「おまえ、サッカー好きなんだってな」「はい。得意だから好きなんです」って言いますが、これは認知から始まっていて、もっとサッカーが得意なやつの中に入れたら、絶対、サッカーが嫌いになります。

でもサッカー好きなやつは、どんなうまいやつの中に入れたって大好きなんです。
好きから始まっていかないといけないのです。好きが始まって、好きから得意ができるんだったらいいんですけど、得意だから好きになってるやつは絶対厳しいです。


 

何回も申し上げますように、好きは理由がないし、好きっていうのは定義によって生まれているわけではないので、 自由なのが何よりいいところです。例えば、「ここのラーメン好き」って言うときに、別に根拠なんかないじゃないですか。「塩分濃度が何・何%により、俺の好きのラーメンの定義の中にここのラーメン屋は入ってるかな」とかないのです。
好きなものは好きで、感覚が好きなので、まさに認知ワールドの対極にある感じです。


ほとんどの人は、この好きが対極にあるから、認知ワールドの中で好きなことが忘れられていくし、好きなことを考えることすらが、ダメなんじゃないかなと思っています。

 

月曜日から金曜日まで耐えて、土日に好きなことをちょっとやって、ちょっと浮上するみたいな。
土日に好きなことができなかったら、月曜日、沈んだ位置から始まるから、木曜日ぐらいにチーンとしてしまうみたいな人がいっぱいいるわけです。


別に好きなことっていうことに限定してほしいんじゃなくて、好きを大事にして、好きを考え、好きをしゃべり、好きを分かち合うっていうことが、あなたのフローをどんなときにももたらせることが重要なんです。

 

「僕は釣りが好きだけど、日ごろできないし、最近忙しくて釣りができない。好きな釣りができないから、俺はノンフローになってる」。

これは、「釣りが好きだ」っていう感覚じゃなくて、釣りそのものに依存してるだけで、ライフスキルではないんですね。

僕はバスケ好きなんですけど、いつもバスケできないです。
毎日NBA見てたいですけど、見てられないです。ですけど、「バスケ好きだな」って考えたら気分が変わる。このことがライフスキルとして非常に重要です。


 

だから「好きなことを考える時間が、日々の生活にあなたはどれくらいありますか」「どれくらい好きなことを人としゃべってますか」っていうことが、その人のライフスキルのレベルだし、組織で言えば、「好きなことについて、どれだけ組織の中でしゃべる時間があるのか」「好きなことをどれだけみんなでしゃべり合ってるのか」っていうことが組織の強さなんです。

 

■             好きなことを考えるだけでいい

ちょっとやってみましょう。好きなことを考えたら絶対気分がよくなります。好きな食べ物は何ですか。僕は納豆が好きです。お好み焼きが好きです。おすしが好きだし、果物が大好きです。
もうこう考えてるだけで僕は気分がいいです。


今、おすし食べたから気分がいいんじゃないし、納豆食ったからじゃなくて、「納豆、好きだな」って考えてるだけで気分がいいです。好きなことを考えるのは、いつでもどこでもできます。いつでもどこでもおすしを食べることは難しい。

 

好きなことを考える時間を、ぜひ増やしてほしいと思います。

何でもできます。好きな色は何ですか。

季節は、何が好きですか。僕は夏が好きです。むちゃくちゃ暑いのが大好きです。とてつもなく暑くても、全然気持ちがいいです。夏が終わりそうになると、もう超寂しい感じがしますね。なんでって言われてもよくわからないですけど、くそ暑いのが大好きです。
「いつか終わって寂しいな」と思ってるんですけど、まあ「終わるから夏がいいのかな」とも思いますが、こうやって理由を探し始めると、また認知ですね。
取りあえず夏を俺は好きだぞっていう感じです。「好きが気分をよくする」っていうことで、自分の好きなことをしゃべっていてもいいですし、好きな食べ物をみんなとしゃべっていてください。


 

■             退屈な会議を活性化させる方法

僕はいろんな会社のトレーニングをやっているので、取締役の会とか部長の会の会議に参加させてもらいます。ファシリテーターというよりはオブザーバーです。

ノンフローな会議はたくさんありますが、ノンフローな会議やってたら、笛吹いてタイムアウトと言います。

「こんなノンフローな会議やってても、パフォーマンス上がってないでしょう」と言って、部長や重役のおじさんたち皆さんで、好きな食べ物の話をさせます。
そうすると、ウナギとか、おすしとか、ステーキとか、焼き肉とか、いろいろ言ったりしますが、そうやって好きな食べ物の話をしてもらうと、その後の会議は、絶対に寝る人が減ります。ほんとです。あと、手を挙げる人の比率が必ず増えます。


 

何もやらず、くそまじめにやって、寝てる人がいて、手を挙げない人がいる会議よりも、みんなでちょっとだけ、好きなものの話をして、好きなものを考えて、心のフロー化をつくったほうが、絶対に会議の活気が上がります。
「揺らがず・とらわれず」がそこに起こるからですね。


でも、もっと必ず起こることがあります。そういうことを僕が会議を止めてやると、必ず「こんな大事な会議のときに、好きな食べ物の話をするのはふざけてるのでやめてくれ」と注意をするおやじがいます。

僕は一応その会社にオブザーバーで行かせてもらってるので、
その偉いおじさんを立てて「すいません」とは言いますが、
腹の中では「ノンフローなまま会議しているおまえが一番ふざけているのであって、
好きな食べ物のことをみんなでちょい考えて、
フロー化を起こして活気のある会議をしてるのは、なにもふざけたことではない」というふうに僕はいつも言っています。


 

■             好きなものを思い浮かべる

必ずそういう人がいます。なぜでしょう。好きなことを考えたり、好きなことをしゃべったりするのは、いけないことだとか、ふざけてることだというふうになってしまっているのはなぜなんでしょうか。「先生は好きなことを大事にしなさいというのはわかります。でもイチローは好きな野球を仕事にしてるし、先生は自分の仕事が好きだからそうやって言えるんで、俺なんか大変なんです」って。

難しい顔をして、しんどそうな顔をして、「楽しい」とか「好き」とかいう、こういうフローな感情が、仕事や日常の中に、ど真ん中にあることを、なぜみんなは否定するのか。
僕に   はよくわかりません。「好き」こそ最高のパフォーマンスを出していくわけですし、好きなことを考える。


 

「会議を好きになれ」って言ってるのとは違います。
これは認知的に「会議を好きにならねばならぬ」とか、「仕事を好きになれ」って言ってるんじゃなくて、好きなことを考えたりしゃべったりすることは、仮に嫌いな仕事の中でもできるでしょうと。


仕事から自分のフローをつくるんじゃなくて、自分自身でフロー化を起こすために、好きなことを考える。それがフロー化を起こすからこそ、あなたは「揺らがず・とらわれず」になるので、もしかするとあなたの機能が上がってきて認知が変わるのです。「仕事の好きな部分を見つけられるかもしれませんよね」っていう発想です。

 

もちろん、仕事の好きをつくるトレーニングをしようと思ったら、「仕事のいいところを見なさい」とか言えば、好きが増えますね。でもいいところを見るっていうのは、仕事に接着化するから、それすら好きではありません。

仕事のいいところを見て、好きをつくりましょう。でも、見れば見るほど、悪いところも見つけたくなりますよ。もちろん、認知的に好きを増やすには、いいところを見るっていう脳の使い方は重要です。同じものを見てても、悪いところを見ていると嫌いな感情が生じるし、いいところを見ていると好きな感情が生じます。

同じ人を見てても、いいところを見れているうちは好きだったけど、その人は何も変わらないのに、こっちが悪いところを見つけた瞬間に嫌いになります。相手は何も変わっていないのに、こちらの見方次第で好きとか嫌いは決まります。

これは認知的な発想です。

 

僕が言いたいのは、そうやってよいところを見ながら好きをつくるのもアリなんだけど、とにかくあなたがもうすでにある好きっていうのを大事にしてください。語ってください。考えてくださいというような練習を日々やってください。いつでもできるでしょうってことです。

 

好きな芸能人、好きな音楽、好きなスポーツ、好きな異性のタイプ。

どんな人でも絶対盛り上がります。今まで好きな話をして、気分悪くなったのを見たことないです。

 

            「どっちが好き」で仲よくなれる

あともう一つ僕が割とみんなのワークの中でやるのは、好きをお互いにシェアすることです。例えば「すき焼きとしゃぶしゃぶ、みなさんどっちが好きですか」。僕はしゃぶしゃぶが好きなんですけど、「しゃぶしゃぶが好きですよね」っていうふうに、誰かに「どっちが好きですか」って聞いてみてください。

 

人って、「どっち好きですか」って聞かれてムカつくやつ、絶対いないから。友達をつくるにも、人とのコミュニケーションをしていくにも、「どっち好きですか」って聞くのはむちゃくちゃいいです。「どっちが正しいですか」って聞かれたら、むちゃくちゃ嫌ですよ。

 

学校の教育は、どっちが正しいかっていう質問に答えなきゃいけないことが多いので、みんな答えるのをしなくなるんですけど、「どっち好きですか」って言われて、ムカつくやついないし、答えられない人いないです。私はおじさんですけど、どんな若い女の子にも、「どっち好き」って聞いたら、絶対即答で友達になれます。

「そうか。おれもしゃぶしゃぶ好きなんだよ」っていって、すぐ仲よしになれますよね。「そうだよね」って。「ええ、このおやじ、何?」って言われたこと、あまりないです。
まあ、「すき焼きとしゃぶしゃぶ、なんで聞いてくるの」とかは思われることありますけど。


 

僕はいろんなスポーツチームのメンタルトレーニングをしてますけども、試合の直前とか、ロッカールームで、みんなが緊張して、「これに負けたらオリンピック行けない」とか、「これに負けたら日本一になれない」とか、「これに負けたらどうしよう」といって緊迫感が高まってノンフローになってたら、ロッカールームでみんなで「すき焼き・しゃぶしゃぶやろう」ってやってます。


もう今さら試合の直前にうまくならないですし、人間のパフォーマンスはフロー化を起こさないとダメなんで、試合にフローで望んだほうがいいんです。「これに負けたら」とか、「金メダルが取れない」とか、「これ、勝ったら、ついに金メダル」とかなりがちなんですけど、とにかくフロー化を起こしたほうがいい。そうしたら好きなことを考えたほうがいいです。

 

■             緊張をほぐすフローになる質問

勝ってるチームが「これに負けるとヤバイな」ってプレッシャーがかかってると、ノンフローになりやすいですね。いつも弱かったチームが初めて決勝戦とかに行って、前半終わってリードしてると、むっちゃとらわれますから、間違いなく後半、逆転ちゃんとしてもらえるようになります。必ずハーフタイムで「すき焼き・しゃぶしゃぶ」やらないとダメです。

 

前半終わって、みんな「今、0-0だと思え。リードしてると思うな。今は試合の始まりだと思え」ってやってること自体、試合の始まりじゃないと思ってるし、0-0だと思ってないから、よけいとらわれますね。だって試合始まる前に、「今、試合の始まりだと思え」って言わないもの。

 

前半終わって、「ここから始まりだと思え」って言えば言うほどとらわれますから、「いいから、すき焼き・しゃぶ  しゃぶやれよ」って言ったほうが、どんどんフロー化が起こるし、とらわれにくくなります。一緒だったら、ちょっと握手してもらうだけでも、もう気分、すごくよくなりますね。

 

僕のワークショップなんかでは大勢の人が来るので、例えば50人の人が来て、みんなが半々ぐらいに好きが分かれそうな質問をみんなで考えます。この時間、超面白いです。50人ぐらいが半々ぐらいで好きが分かれそうな質問、ちょっと考えてみてください。

 

どんなのがありますか。僕がいつも思いつくのは、このすき焼き・しゃぶしゃぶ。だいたい半分ぐらいになります、 年齢に関係なくね。あとは、いつも僕がやるのは、「おにぎり食べるんだったら、梅干しが好きですか、お昆布が好きですか」みたいな。これもだいたい半分ぐらいになります。あとは何がありますかね。

「スポーツ好きですか、音楽好きですか」っていうと、スポーツがちょっと多くなりが    ちな感じはあります。でも、「ラーメンとカレー、どっちが好きですか」とか、「そばとうどん、どっち好きですか」とか、まあ何でもいいです。やってるだけで、みんなでやって「あー」っていって盛り上がります。

 

どっちが多いなんて、実はどうでもいいんですけど、でも認知はすごく、それがまた気になります。「なんかしゃぶしゃぶのほうが多いじゃん」とか、「なんかお昆布、少なかったね」。そんなのどうでもいいんです。そういうことを考えてると、気分がよかったでしょうって。

 

天気は変わらない。あなたの年齢は変わらない。あなたの職業は変わらない。あなたの財布の中は変わらない。あなたの奥さんは変わらない。何も変わらないけれども、好きなことを考えて、しゃべって、人とシェアしたら、あなたの気分は変わった。この事実がむちゃくちゃ大事なのに、みんな軽視しています。

 

■             ただ考えるのがライフスキル

あとみんなでやるワークの中で僕がよくやるのは、「全員好きだって言えるような質問は何かないですか」。「ここにいる人が間違いなく全員好きっていう、なんかテーマないですか」。
これ、なかなかないですけれどもね。


 

温泉とかって言って、時々「俺、温泉嫌いなんだけど」という人もいたりするね。ディズニーランド。子どもたちだったらだいたいいけますけど、おじさんとかいると、「いや、ディズニーランド、混んでて好きじゃねえし」とかなるケースもあります。

男ばっかりいたら、「女、好きですか」って聞いたら、全員好きって言いますね。
時々違う人がいますけど、まあ基本的に、みんな好きって言いますね。
「青空、好きですか」って言ったら、みんな好きっていうケースが多いです。  まあ、そんなことをやったりしてますね。


 

いろいろこうやって好きなことを題材に会話をするっていうことを、普段皆さん、軽視してるというか、ばかにしてるというか、あんまり会話しなくないですか。どうですか。毎日好きなことをどれくらいしゃべってますか、人と。 好きなことについて最近しゃべったのはいつですか。

「好きなことをやれ」じゃないんですよ。行動まで行っちゃうと、もうライフスキルじゃないですね。ライフスキルは脳の機能です。

脳の機能で、ライフスキルって、ただ考えるだけでいいじゃないですか。ただ一生懸命を楽しもうと考えるだけ。好きなことを考えるだけで気分が変わるっていうことなんですけど、みんな慣れてないので、ただ考えるだけが苦手です。気づいたり考えたりするだけが、ライフスキルのすごくいいところなんですけども。

 

なんで苦手なのか、難しいのかっていうと、みんな考えるっていうのは、やっぱり認知のことを思い浮かべるからです。外側の出来事に対してどのように考えるのかを考えるんだって思い込んでいるんですよ。考えるとは、学校で勉強のときに「問題に向かって考える」を、「考える」だと思ってます。

確かに問題を読んで、どんな意味かを考え、どんな答えが正解なのかを考えるのが「考える」ですけど、これは「認知の考える」です。

 

「ライフスキルの考える」は、ただ考えれば気分が変わるっていうことなんですけど、皆さん、 それが苦手です。

考えるっていうのは、何かに接着しなきゃいけないから。

なので「ライフスキルの考える」は自動詞的です。
ただ考えるだから。認知の考えるは他動詞です。
「○○を考える」です。「○○について考える」です。


 

ライフスキルは、そうじゃなくていいんです。
好きなこと、「好き」をとにかく考える。ただ「ありがたい」を考える。好きだと考える。一生懸命を楽しもうと考えるだけでいいんです。


 

「何が好きかな」とか、「おれの好きなのは……」。よくありますよね。
好きな食べもののことを言ってくださいって言うんですけど、「合ってるかどうかわからないですけど、ラーメンです」とか言う人がいますからね。


 

これ、超危ないですよね。認知的に行きすぎていて、「合ってるかどうかわからないですけど、僕の好きはラーメンです」って答えるのはもう末期的です。

学校の質問はすべて、「はーい、わかる人」っていう質問しか来ないから。
わかるっていうことは正解があるかどうかで、


「はーい、どう思いますか」っていう質問は学校から来ないから。
もう徹底的に認知が鍛えられるから。


ところが日本の認知は中途半端で、正解か間違いかだけで、認知の幅を広げるために、ディベートみたいにいろんな考え方があるんだといって、そういうのはやってないです。


ただ「○か×か」「1か0か」の認知だけ鍛えられてるから、
我々は自分の意見も主張しにくいし、ライフスキルも育ちにくいんです。教育が問題なんだと思いますよ。


 

■             思考が「脳波」をつくり出す

イギリスにバイオリンで留学している女の子が僕のところにメンタルトレーニングに来たんです。
まだ13歳なんですけど、天才バイオリニストの一人です。


 

小さいころは、どんな演奏会やコンクールも、全然緊張しなくてできてたのに、中学校に入って、技はうまくなってきてるのに、緊張するんですと。前みたいに自信が持てなくなってきたんですと。これはまさに(浅田)真央ちゃんと似てて、大人になってきて、認知して、経験とともに認知と意味づけが起こるからです。

本人が、悩んでて、お母さんが「なんかそういうメンタルのこととかを解消してる誰かいないのか」といって、僕が音楽家向けにも本を書いてるので、その本を読んでいただいて、夏休みにイギリスから日本に帰ってきて、お母さまとお父さまと一緒に来たんですね。

その子と3日間、毎日メントレやったんですけど、中学生なんで素直なんですけど、だんだんだんだん認知が起き始めていて、意味づけが起こり始めていて、理窟や理由がすごくだんだんだんだん芽生え始めてきてるころですよ。ひと言で言うと、子どもから大人になる、素直じゃなくなってくる感じです。理屈をこね始めるわけです。

 

これからバイオリンのスキルとともにライフスキルをはぐくみながら、いいバイオリニストになってもらいたいなと思うんで、3日間トレーニングをしたときに、「ただ考えるだけでいいんだよ」って言って、子どもなので素直で、「ただ考えるだけでいいんですね」ってやってくれます。しかし、何か彼女にわかりやすく、ただ考えるだけでなぜいいのかを、うまく言えないかなって、3日間メントレしながらずっと思ってたんですよ。

 

いかにこのわかりにくい「脳と心の話」をみんなにわかりやすくするかって、事例というか、テーマというかを探すのに、いつも朝から晩まで考えてるんです。今回も「なんか彼女がわかりやすくて、ただ考えるだけでいいっていう、なんかいい事例ないかな」と思っていました。3日目の終わりごろになって、彼女はバイオリンを朝から晩まで弾いているので、ふと思ったんです。

考えるだけでなぜいいかというと、考えると、脳波が変わるわけです、人間というのは。つまり、波が起こるんです。人間に波動が起こるわけですよ。

 

脳の中の波動は「脳波」と言いますね。ウエーブが起こる。例えばアルファ波とか、ベータ波が、考え、思考するだけで起こるわけです。そうすると、我々にとっては、その脳波の変化が、心の変化として感じるわけです。つまり、思考が脳波をつくり、その脳波が心の状態に変化を感じさせる。心の状態にフローな風が吹くというか、フローを奏でる感じなんですよ。

で、どうしてそう思ったかというと、彼女がバイオリンを演奏するというのは、バイオリンを弦で奏でるわけですね。そうすると、彼女が弦を弾くと、そこから波動が音波に乗って、僕たちには美しい音色として届くわけです。それと同じ感じなんですよ。

バイオリンを奏でるのと同じように、考えるということが脳に波動を起こして、脳波をつくる。
それが音となり僕 らに届くのではなくて、心の状態にフローっていう感覚で僕らの心を奏でてくれる感じです。


ただ考えることが、脳波を変化させます。そのことが心の状態を変化すると僕らは感じるように人間はできてますので、ただ感じるだけで十分なんですよというのは、そういう理由です。考えると脳波が起こって、心に状態が起こるんです。

 

心に変化を起こすと機能が上がる。

 

もっと科学が進むと、どんな脳波でどのように感じるかまで解析されると思いますけど、僕はそんなことには興味なく、「実際の現象としてそう考えれば、心に変化が起こるよね。それでいいじゃない」っていう実学主義なので、そちらのことを大事にしてます。

 

時代がたったら、脳波だけじゃなくて、そういう脳波が起こると、脳内の化学物質が分泌されて、気分がいいと感じるっていうふうに証明されるかもしれませんね。
例えば、一生懸命を楽しもうと考えたり、言葉を選んだり、考えたりするだけで、好きなことを考えたりするだけで、脳波が変わり、脳内の分泌物が変わって、そのように感じるっていうことが証明されるかもしれませんけど、まあ別にそんなのどうでもいいじゃないですか。 そういう現象があなたの中に起こってるっていうことが、この実学として大事です。


 

この応用スポーツ心理学は、科学を背景にした実学なので、あなたの中に起こっている「知恵」です。好きなことを考えてないより考えたほうが、あなたの心の状態は、外側の出来事に持ってかれず、間違いなく変わります。
なので好きなことを考える習慣をつけ、好きなことをしゃべり、好きなことを人と分かち合うっていう習慣をつける。認知的な得意っていうことだけのワールドの中から、もしくは結果や比較や相対の中から、自由で絶対的なこの好きっていう感情を自らつくり出す。そのことで、自由にフローで生きていくことの可能性が生まれるので、ぜひ好きっていうことを考えることを、いま一度やってください。


そのうち、だんだんだんだんあなたの機能が上がってくると、認知の機能も上がってくるので、同じ今までに接していたものの中で、好きなことを見つけられるようにもなってくるかもしれません。

まず考え、まず心に変化を起こすこと。

それがあなたの機能を少しずつ上げて、あなたの認知の機能がさらに、今やっている仕事を好きになれるかもしれません。ぜひ好きを考えるっていうことを、日々の生活の中で入れてください。あなたは何の食べものが好きですか。ということで、好きを考えてください。好きなことを大事にすると考えればいいんです。「好きを大事にすると考える」ことが、ライフスキルです。

 


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