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フローマインド17  応援する生き方

2022.04.27

応援する生き方  (辻秀一メソッドより)


■        集中とリラックスのバランス  

オリンピック、スポーツの場面で自分の力を発揮できる人、できない人がいますね。

自分の力をしっかりと発揮しきれた選手たちに、共通して感じるのは、認知の脳だけではなくライフスキルという部分の脳が日頃から習慣化されていていることです。

外側の出来事、外側の人などに自分の心が持っていかれてしまっているのではなくて、外側の出来事と関係なく、集中とリラックスがバランスよくある感じ。

もしくは、どんな場面でも余裕がある感じ。はたまた自信がある感じ。

はたまた機嫌がいいっぽい感じ。総合的には皆さん「揺らがず・とらわれず」な感じです。

 

オリンピックのあのような場でも、ライフスキルという脳が普段から使われていることによって習慣化されているがために、自分の心は自分でつくる、「揺らがず・とらわれず」な方向につくられている選手たちがたくさんいるように思います。

じゃあ、選手たちがみんながみんな、そういうことがすぐできているかというと、彼らは彼らなりに悩みながら、「どうやったら自分の力が出るんだろうか」とか、「自分らしく生きられるんだろうか」とか、「大事な本番で結果が出せるんだろうか」とか、「人生にかかわるような大きなシーンでどうなるんだろうか」ということを克服していくプロセスの中で、このライフスキルという一つの脳の機能、スキルが培われていったと思います。

そんなオリンピック、スポーツというのを見て、心の状態とか脳の使い方が非常にわかりやすい人間の営み、いろいろなことを感じてもらえるのではないかと思うのです。

 

■        応援する思考はエネルギー     

そんなオリンピックを、毎日ご覧になった方は多いと思いますが、夜中まで見て応援していたのではないでしょうか。

普段、用事で夜中まで起きているというのは、我々にとって決して気持ちいいcomfortableなことではないですね。それが仕事であればあるほど「えー、なんでこんな夜中までやるの」となると思います。しかし、皆さんはオリンピックを夜まで見て、脳がどんな感じで見ていたのか、それをちょっと抽出してひもときたいと思います。

 

一般的には、応援しながら観ていた人がほとんどだと思います。なかには分析しながら解説者のように、もしくは科学者のように観ていた方もいるかもしれません。
もしくは、ただ観てただ楽しんで、ただその時間を共有していた人もいるかもしれませんが、多くの人は応援していたと思うんですね。


冷静に考えてもらいたいのですが、
メディアはよく我々のこの「応援の声が届いて、選手たちが力を出した」と言っていますが、実際には届いていないですよね。選手たちはそれを、選手たち自身が感じたと。自分で脳が作り出しているだけであって、物質的には実際には届いていません。


ただ、人間の脳のこの「応援する思考」というのは、一つの波動、エネルギーなので、そういう波動、エネルギーが空間を超えて彼らに届いていった──かもしれません。

それは僕は証明できませんし、そうであってもいいなとは思います。今ここで申し上げたいことは、応援していた皆さん自身が元気であったこと。そこに着目してほしいんです。

 

■        認知の応援、ライフスキルの応援       

応援するということは、こちら側からすると他者にエネルギーを与えようとする脳の機能の代表の一つでもありますね。応援ということによって、誰かまわりの人や他者を元気づけようと、脳が考え、働くことです。

この応援というのは「※フォワードの法則」に則った脳の思考パターンです。

応援するということを認知的に言うと、「誰をどのようにしてなぜ応援しなきゃいけないのか」と考えて、実際に応援するという行動を相手に伝えていく。
そんなことが、認知による応援ですね。これもとても大切なことだと思います。


 

しかし、先ほどから申し上げている、夜中に向こうに届くわけもないですが、
「がんばれ!」と応援していた時の自分はいかがでしょうか。


勝つか負けるかわからない。仮に負ける結果があったとしても、「がんばれ」と応援している時、

「がんばれ」と脳が機能し、「がんばれ」と脳が発動している時の皆さんの気分がどうなのか。

 

それを考えますと、僕らは「がんばれ」と考えている時に、間違いなく気分が悪い方向に、むかつく方向に、腹が立つ方向に、不安になる方向に、ウザイ方向にはいかないんじゃないでしょうか。

「がんばれ」と考えている時。「何をがんばれ」とか、「誰をがんばれ」とか、「なぜがんばれ」──じゃないんです。

 

これはライフスキルの醍醐味で、そこに理由はないけれども、そういうふうに思考することそのものが、自分の気分をいい方向にしてくれる。

自分の気分が少なくとも「揺らがず・とらわれず」な方向に傾く。
自分の気分が、やや余裕がある方向にいく。


そんなことのために、この脳を使うというのが、ライフスキルですね。

 

■        がんばれと考えると気分が変わる       

そういうことからすると、「フォワードの法則」に則った、このエネルギーを与えようとする「がんばれ」と考えることは、ライフスキルの王道だと私は思います。

ただ「がんばれ」と考えた自分はどうですか。ただ「がんばれ」と考えると、まわりに対しても含めてですけど、ただ「ありがたい」と考えるというのとも、ちょっと似ていますね。

ライフスキルですから、「フォワードの法則」に入っています。

ただ「がんばれ」と考える。自分自身に「がんばれ」とかじゃなくて、ただ「がんばれ」と考える。

 

そうすると、この思考は粒子物理学的に言って脳の中にエネルギーを作り出す。磁場を作り出す。


すなわち波動を生みます。

この波動が他者に伝わるかどうかは、私は定かではないです。
しかし、自分自身で言えばこの波動は脳波を生じさせて、自分の体感と気分を夜中のどこか日本のある街で、遠いロンドンを見ながら「がんばれ」とやっている自分の気分をよくしている。その現象、事実をとらえてもらいたいなと思います。


ということは、ただ「がんばれ」と考えるだけで、

その瞬間、

まわりの事象や出来事や人は変わらなくても、自分の気分を変えられるというすごいことが起こる。そんな体感をぜひしてもらいたいなと思います。

 

■        イアン・ソープが実証したこと          

応援することが、すなわち自分のためになるんだという体感をたくさん持ってもらいたいですね。例えばオリンピックの話で言うと、皆さんの記憶にありますかね。オーストラリアのイアン・ソープ選手。水泳で何冠も取ったすばらしい選手がいます。

まだスポーツ選手が自分の同僚や仲間たちを大会期間中に「応援する」「応援しようと考えていく」ということが、選手のエネルギーを高め、パフォーマンスを上げていくということにつながるということが理解されていない、「フォワードの法則」が明確にされていない頃。

イアン・ソープ選手が、誰ということを対象ではないですけれども、どうやってではないですけれども、特にオーストラリアの仲間だったり、自分の仲間たちをただただ「がんばれ」と応援している。

「今度の試合でどうやって勝つのか」「どうやって力を発揮するのか」「負けたらどうしよう」となっている中で、ただ「がんばれ」と考えているほうが力が発揮できるんだというコメントをしていた。

 

イアン・ソープ選手がその応用スポーツ心理学で考えられていたこの「フォワードの法則」を、実際の場で言葉にし、みんなに伝えて、そのことの価値を享受したということがありました。私はそれがすごく印象に残っていて、それ以後、水泳界でも北島選手をはじめ、どうやって応援するとかじゃなく、何か応援しているほうが、自分の心の状態にフローな風を吹かせ、フロー化を起こすということがあるのだと、そのことによって、自分のプレーの質がよくなるとか、パフォーマンスの質がよくなってレベルが上がることにつながるということを、スポーツ界でもだんだんいうようになりました。

 

■        タイガー・ウッズのフロー思考          

今や、割とスポーツの世界では「応援する」ということが自分のためになるのだとなってきています。事例を申し上げると、いろいろな事件を起こしてしまいましたが、タイガー・ウッズが全盛期の頃に、自分のプレーを最も安定させる思考は何かという問いに

どんな時も、どんなライバルも『がんばれ』と応援していると、自分のマインドはものすごく安定感がある」ということを言ってある英語の雑誌に書いてありました。

 

これは、ものすごくみんなを驚かせました。何も自分のライバルが勝ってほしいとか、自分のライバルが自分に打ち勝つように願うことを応援するのではなく、どんな人も「ただただがんばれ」というふうに、自分の脳が考えているほうが、まわりに何が起ころうが、それに持っていかれず、自分の心の状態が安定していられるというようなことをタイガー・ウッズは言ったんですね。

 

これはすばらしいことです。大抵のゴルファーはどうしているかというと、自分のライバルがいると、下手したら 2メートルのバーディーパットを自分のライバルが残していたりすると、「はずせ」みたいに願っている人がたくさんいます。

「はずしてくれ」といっても、入るものは入りますね。

「はずしてくれ、うまくいかないようになってくれ」とやっていると、入っちゃったり、うまくいった時にガックリ したり、イラだったり、残念になったり、ノンフローになるのは、実は自分自身だというようなことがわかってきた。

タイガー・ウッズはこの実学的な実践心理学としての応用スポーツ心理学を実行し、自分の心の状態を常にそのようなライフスキル、フロー思考によって作っていたんだなということが、すごくよくわかった事例です。

 

そういう話をすれば枚挙にいとまがないのですが、例えば、4年前のWBC最終戦(韓国戦)でイチローが出ていて、すばらしい結果を出しました。途中、キューバ戦あたりはものすごく調子が悪くて、12打席連続ノーヒットでした。

そんな状況があった中で、あの時のWBCの仲間たち、片岡選手とか内川選手とか稲葉選手とか、今も日本のトップで活躍している彼らが、とてもライフスキルの高い人で、そういうイチロー選手の状態を見て、ただただ、とにかく応援するように何かできないかと。

 

実際にイチローを応援に行くのではなくて、何か自分たちがイチローさんの調子の悪いことに引っ張られてしまう中で、自分たちがただただ応援していくことで──

彼らの場合は少し行動も伴っていましたけれども、みんながイチローさんを応援している、自分の気持ちをあらわそうということで、イチローさんのスタイルに合わせてストッキングを上げて応援の気持ちを示していた。

 

だからといってイチローに「俺らは応援してんだ」と伝えたわけでもなく、そういう応援モードでいるほうが自分たちも気持ちがいいからだというようなことを理由にした。

 

つまり、外側に理由がなく、イチローさんを打たせるためというよりは、まず自分が気分がよくなるために、そういうふうに応援のモードを自分で作り出していた。それもすごく印象的でした。

 

そのWBCの時にもっと僕が印象的だったことの一つは、韓国戦の時に、日本がリードしていたにもかかわらず、ダルビッシュ投手が打たれて追いつかれてしまったときのことです。
すごくいやな流れになっていて、ノンフローになりがちな、そんな時に、イチロー選手が、ただただ「ダルビッシュがんばれ」と、ライトで守りながら考えていたということをコメントしていますね。


これはまさに自然にフォワードの法則、応援するというライフスキルが日頃からつちかわれ、習慣化されているので発動した瞬間だと思います。

 

■        究極のライフスキルは九九?    

ライフスキルというのは、「さあ、出そう」と思わなくても、日頃からそういう体感を伴ってスキル化されていれば、必要な時に自動的に発動します。

「九九」と一緒ですね。

いつも「さざんがきゅう、しにがはち」と言っていなくても、必要な場面で「9人、人がいます。じゃあ皆さん、分かれてください」というと、自然に脳がその「さざんがきゅう」の九九が発動されて、うまく脳が使われるのと一緒で。

ライフスキルというのは日頃から育まれ、スキル化されていると、自然に自分の心を守っていくために、フロー化を起こすために発動されます。

 

認知の脳で生きていると、外側に起こった出来事だけが人生の価値観だと思い込んでいます。


ライフスキル脳の使い方によって心の状態に変化が起こったという、このものすごいご褒美があることを、ほとんどの人は軽視しています。


このライフスキル、ただただ「応援する」「がんばれ」と考えるということは、そんなに難しいことではありません。

「イチロー選手のようにバッティングをしろ」と言われたら難しいかもしれないですが、「ただただどんな時も応援しているほうが自分が気分がいいよ」ということをできない人は、そういないはずですね。やらない人はいますが・・・。

 

■        応援と対極にある認知による嫉妬       

結果ではなく、そういうふうに実践して意識しているかということが、ライフスキルの大きなポイントです。「応援したけど、別に勝たなかった」という人もいるんですが、


そうではなくて、応援して「がんばろう」と考えている時のご自身の気分が、どういうふうに変化したのか。

その事象が財産だというふうになっていただきたいです。

応援してどうなるとか、どのような方法で誰をなぜ応援するのかという話ではなく、
ただただ「がんばれ」「応援しよう」と考えていることが、自分の脳の中でエネルギーを生じ、波動を生じさせて気分を変える体感を作り出すということの事実。


ただただ応援するということを日頃の脳の習慣の一つに加えていただければ、もしかすると皆さん自身の見え方とか感じ方とか、さまざまなものが変化してくるのではないかと思います。

 

応援という、この脳のライフスキル。

究極の反対にあるのが、認知的にやる嫉妬です。

 

認知の脳は、まわりを見て評価して比較したりするので、嫉妬という脳の機能が起こります。

それはもうまさに認 知の脳の機能のなせるわざで、認知の脳だけを使っていると、我々は必ず人、まわり、他人に対して嫉妬が起こります。嫉妬の脳は、実は我々をものすごくノンフローにしています。

嫉妬される人がノンフローではなく、

嫉妬している自分自身がノンフローです。

 

しかし、認知の脳がある限り、人間は嫉妬します。みんな、「嫉妬するのはいけない」と言いながら嫉妬します。これは人間が生きる限り、必ず認知の脳があれば嫉妬というのは起こるのです。なので、嫉妬をやめろと言う教えは、認知をやめろという教えなので「死ね」ということです。

基本、嫉妬はいけないということはわかっていますが、やめられないです。

認知の脳がある限り、残念ながら。

 

そこで、認知の脳が嫉妬する自分自身とは別に、ただただ応援して「がんばれ」という自分を作り出していくことによって、嫉妬する認知の発動が落ちます。

自分の人生が自分にとって気分がいい、という体感が起こっていくと、パフォーマンスの質がよくなってレベルが上がることにつながるのです。


■        フォワードの法則は脳の習慣  

究極を言うと、「わら人形の法則はない」ということです。
わら人形を打っている人が不幸なわけです。ぜひどんな人も「がんばれ」と、ただただ理由なく、理由を離れて、自分のために「フォワードの法則」に則って応援するという脳の習慣をつけていただきたいと思います。


 

応援するという感覚の脳を持つことが重要なんです。人間は与えようと考えたら絶対にα波を生じようとするという構造があるわけです。

みんなそれを忘れてしまって、ほとんどの人は使ってないですけどね。

普通α波はなぜ生まれるかというと、
誰かにもらった時か、誰かから応援された時しかならないですけど、人間には応援すると考えることで、それを発動する仕組みが脳の中にあるわけです。でも使っていないと、どんどんそれが風化していきます。


 

皆さん、ただただ「がんばれ」と、応援しながら生きていきませんか。「応援しなければならない」「誰々を、じゃあどうやって応援するんだ」って、また皆さん、なりそうですけども、そうではなく、ただただ「がんばれ」と考えて生きる時間を増やしませんか。

そのことがあなたのフローの心を作り出してくれることにつながると思います。ぜひ、ただただ、「がんばる」でいきましょう。

 

※フォワードの法則……人間には、何かをあげることで相手が喜んだとき、その相手の喜びの分だけ自分も喜べるという本能を持っていること。

 


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