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フローマインド16 感謝する生き方
2022.04.27
感謝する生き方 (辻秀一メソッドより)
■ 考えるだけで心の感じ方が変わる
ライフスキルは、我々の心をマネジメントするために非常に便利な脳です。
しかし、このライフスキルがなくても死なないので、意識するのを忘れがになります。
ライフスキルの基本は「脳の中で思考する」ということによって、脳波が変わり、心の感じ方が変わっていくという便利な脳の使い方です。そう、ただ考えるだけです。
ただ考えるだけでいいので、本当はものすごく簡単なのですが、外側の出来事とつながっていないので、ただ考えることが慣れていないようで「難しい」というふうに感じられます。
今日は認知的な脳の使い方と、ライフスキル脳の使い方の違いを理解していただくにはちょうどいい「感謝」というテーマについてお話しします。
■ 認知的感謝とライフスキル的感謝
通常、感謝しなきゃいけないと小さい頃から言われてきているでしょうし、感謝しないよりしたほうがいいから「感謝しなさい」と言って我々は生きていますが、日々感謝しながら生きるってどうでしょうか。
「まあ、言われたらわかるけど」という感じが感謝だと思います。
オリンピックとかを見ていますと、「感謝」ということを試合後に言う選手はたくさんいます。メダルが取れて結果が出て、多くの人に支えられたことに感謝するというのは、通常どおりの脳の使い方、外側に理由があるので、まさに認知的な感謝なわけですね。
「認知的な感謝」と「ライフスキル的な感謝」は、一体何が違うのかということですが、認知はあくまで外側に理由があり対象物があります。
ワークショップなどでよくやるのですが、
例えば会社の仲間でグループになってもらって、自分以外のそのグループにいる人の名前を書き出してもらいます。例えば、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、EさんとFさんの6人でグループを作ったとします。
FさんはAからEさんまで5人の名前を書いているのですが、このAさんからEさんまでに、理由をつけて感謝の言葉をノートに書き出してくださいという課題を出します。
「Aさん、○○○○なのでありがとうございます」
「Bさん、○○○○なのでありがとうございます」
「Cさん、○×○×でありがとうございます」
Dさん、Eさんというふうに、Fさんにやっていただきます。
まあいろいろ考えながら、「この人に何かありがたいことをしてもらったかな」とか、過去を振り返りながら、「まあ、あのことぐらいを感謝しようかなあ」というような形で、いろいろな理由を探します。
■ 感謝する理由を探すのは難しい
理由を探しているので、脳はもう相手に持っていかれてしまっています。
FさんはAさんを見ながら、Aさんのことをむちゃくちゃ考えながら、Aさんに「何か感謝できることはないかな」と。
しかし、Aさんを見ているうちに下手をするとこうなります。
何かAさんのことを見ているうちに、文句を言いたいことまで見つけるように、認知の脳がそうなってきます。「こういうありがたいこともしてくれたけど、でもこいつ、こうだなあ」とかいうふうに、認知の脳はとめどもなく、相手を見ると相手にさまざまな意味づけと、相手の過去を見るようになってきます。
そして認知の暴走が起こりはじめます。
もちろん、その中でも今、お題が「感謝」となっているので、何とか感謝することを探して、とりあえず課題を終えてFさんは「終わりました」と手を挙げます。
でも、終わった時のFさんの顔を見ると、あまりフローになっていない感じがします。
一生懸命考えて、「何とか作り出したな」みたいな。
時には、こういうことがあります。
今度はEさんはAさん、Bさん、Cさん、Dさん、そしてFさんへの感謝をノートに書き出すという課題に挑みます。EさんはAさん、Bさんのことをあまり知らない。
会社で同僚だけど、あまり知らないと「こいつのこと、よく知らねえし、どうしたらいいかなあ」といって、何かとりあえずとってつけたようなことを言い始めます。
「こっちを見てるだけでありがとう」みたいな。
間違いじゃないですけど、知らなくても結構難しいですね。
その感謝していくということは。
理由をつけながら、その人に感謝の根拠を探して、そのことによってその人に感謝をしていく。知らなくても難しいし、実は知りすぎていても難しい。
先ほど、Fさんが知りすぎていて、「いやあ、文句も見つかっちゃう」みたいなのは、例えば、「奥さんに感謝したほうがいいとわかってるけど、難しい」というやつでしょうか。
「部下や秘書に感謝したほうがいいということがわかっているのに難しい」というやつでしょうか。
「親に感謝したほうがいいとわかっているけど、難しい」というやつでしょうか。
これは、知りすぎているがために、認知の脳がさまざまな意味づけを起こしています。
感謝したほうがいいということはわかっているけど、実際に感謝することがなぜ難しいかというと、その人を見て、その人に接着して、その人から理由と根拠を探し始めると、認知の脳はさまざまな部分を見てしまうからということになります。
■ 知らない人に感謝するのも難しい
一方、「どんな人にでも感謝しようよ」と言って、まったく知らない人に「理由なく理屈なく根拠なく感謝しろ」と認知の脳が言われても、実はこれまた難しい。
大抵の、今、我々が言っている感謝というのは、この認知による感謝で相手依存型です。
すなわち、相手に脳が向いて、それによってほぼ「相手のために感謝しろ」というふうになっています。これは、とても大事なことではあります。
このことを否定しているわけではないです。
実は大事なことなんですけれども、相手が主体になりながら理由を求めて感謝しようとしていると実は難しいのです。
僕らの言葉で言えば「持っていかれて」しまいます。「よう知らんのだけど」とか、「でもこいつ、こうだしな」とか言って持っていかれてしまうわけですね。
たしかにこのワークをAさんからFさんまでが、残り5人の分の感謝のコメントを書いて発表して、「Aさん、○○でありがとうございます」「Bさん、○○でありがとうございます」「Cさん、○○でありがとうございます」「Dさん、○○でありがとうございます」「Eさん、これでありがとうございます」と、Fさんが言うと、
言われたAさんからEさんまでは、みんなフローな方向へ傾きます。
でも、あんまりFさんはフローになってないですね。
ライフスキルはまず「自分をフローにしよう」というワークなわけです。
自分のフロー化を起こすための脳の使い方をライフスキルとして学んでいるわけですし、私がお伝えしていることは、自分の脳の使い方で大事なことは、いつでもどこでも自分をフローにできるということです。
そんな脳の使い方がこのライフスキルの極意ですが、今の感謝は相手に依存しているので、「いつでもどこでも」というのがなかなか難しいです。
そいつのことをよく考えていかなきゃいけないので、Fさんがいつでもどこでも感謝するというために、何かの対象物を常に探さなければいけませんし、その対象物を見るがために、対象物に持っていかれてしまうという習性があります。
■ 感謝すると、相手がフローになる
「相手のために」は大事ですよ。何かをしていただいたら感謝の言葉を述べる。
感謝の意思をその人に伝えるというのは、相手をフローにしていくためには、とても重要なことです。
これは相手をフローにしていくための人との接し方、コーチ力の中に含まれています。
今回、ここで申し上げたいことは、今申し上げたような感謝とはちょっとひと味違います。
今のこのワークの中で、参加者に「もう一回、感謝の言葉をやってください」と、皆さんに課題を出します。
「Fさん、いいですか、もう一回、AさんからEさんまでの名前を書いて、さっきとは違った理由で感謝してください」と言うと、
Fさんは「マジですか」・・・
そこからみんなは、ほぼ暗くなり始めます。
「うーん」と言いながら、何かの感謝の理由を、さっきと違ったものを、そいつを見ながら絞ろうと思います。何回も申し上げますように、見れば見るほどほかの部分を見つけてきます。
そして、見れば見るほど「知らねえな、こいつのことは」となったりします。
そして皆さんに、さっきよりももっと時間がかかって「終わりましたか」というと、皆さんがしぶしぶ「やりました」となります。
たしかにまた発表すると、「あ、こんなことまで見ててくれたのか」という場合もあって、言われたほうの人はフローになることは、しばしばあります。
そしてひと通り終わって「じゃあ皆さん、もう一回やってください」、皆さん、ほとんど抵抗勢力になって「もう無理」という感じになったりします。
なかには得意な人もいますね。そういう認知を割と鍛えていて、いつでもどこか感謝することを見つけるという習性が認知として鍛えられている人は、意外に上手にやったりすることもあります。
すごくフローで生きていると、その人の機能が上がるので、認知の機能も上がりフローな時は見つけやすいです。しかし、ノンフローになってくればくるほど、すなわち先ほどの感謝のワークの回数を重ねれば重ねるほど、皆さんノンフローになるわけですね。「えーっ、またですか」となってノンフローになります。
「また」という意味づけを起こして、「またですか」と言ってノンフローになって考えさせると、ますます難しくなってきます。一回目だから簡単というよりは、フローな状態でやっているほうが認知の機能も高まるので、感謝する部分を見つけやすいというようなことにも気づかされます。
こういうワークをやっていくと、皆さんに「感謝って大事ですよね。これから感謝していくことが大事ですよね。皆さん、感謝してください」と言っても、ほとんどみんなの心には響かない感じがあります。
「まあ、確かに感謝したほうがいいかもしれない。相手のためには」
しかし、「難しいですよね」って。
そして、「あんまりフローにならないですよね」
「じゃあ、感謝ってライフスキルなんですか」と言われるようになります。
■ 念仏を唱えるようにただ感謝する
そこでライフスキルの感謝の話をします。極めて簡単です。
「とりあえず、皆さん、『ありがたい』と、相手には関係なく考えてみてください。
「ありがたい。ありがたい」
「何がありがたいんですか」
「いや、何がありがたいなんて考えては、また対象物が出てしまうでしょう。何がありがたいかと考えるのではなく、ただ『ありがたいな』と考えませんか」
「いやあ、怪しいっすね」 多くの人がまた言います。
「いや、怪しいんですよ。ライフスキルは認知の脳の使い方からしてみれば、対象物がないので怪しいんですよ」ただありがたいと考えるだけで、「何か怪しいですね。念仏みたいで」と言う人もいます。
わかりませんが、仏教の世界で作られたお念仏というのは、脳の中で唱えることで、もしくは口に出していくことで、科学がわからない時代に脳波が起こって、脳の中にエネルギーが生じて心の状態を変化させられるものだったのかもしれません。
私は「念仏を唱えてほしい」ということを言いたいのではありません。
ただ考えるだけでも気分が変わっていくような、脳の中にいい波動とエネルギーと磁場が生まれるような、ただ考える思考のパターンがいくつかありますよと申し上げたいわけです。
例えば、その一つが「今に生きる」とか、あとは、自分の感情に気づくとか。
言葉を選ぶと考えたりとか、どういう言葉が自分の気分をよくするだろうかと考えているだけで、気分が変わってきます。
「フローの価値を考えよう」と考えているだけで、気分が変わってきます。
もちろん、フローの価値を具体的に考えていけば、ますますそれはいいでしょう。
イメージすると考えていくだけで、何か気分がやや変わります。そして、そこから実際にいろいろなイメージを膨らませいただきたいと思います。まず「ただありがたいと考える」のです。
■ 感謝が足りないとスランプに?
サッカーの長友選手。彼は大学時代も、FC東京へ行っても、主たる選手で大活躍した選手ではありませんでした。むしろ試合に使われず応援席でもっとも頑張って応援していた、一生懸命を楽しむライフスキルがあったりする人物だったらしいのです。
明治大学の監督さんがいて当時の長友さんの話をしていました。
その長友さんがどんどん活躍していって、今セリエAにいて、インテルに行ってからも、最初は活躍できましたが、途中でスランプに陥ったと。どうしてスランプに陥っていくかというと・・・
やはり認知が働き始めるんですね。
「日本のやり方がなんで通用しないんだ」とか、「イタリアはなんでこうなんだ」「なんでインテルはこうなんだ」とかいって、どんどん認知が働いて外側の出来事に持っていかれるようになります。そして、「結果エントリー」にどんどんなります。またメディアを含めて外の評価ばかりが気になり始めます。
認知を外へ外へ持っていかれて、比較をするようになってきて、そして結果エントリーにどんどんなります。認知の暴走が起こり始めてスランプが起こりますね。
スポーツは、スランプが起こると非常に明確で、パフォーマンスが落ちるので、試合に出されなくなります。ベンチ行きですね。「お前、パフォーマンス出してないからベンチ行けよ」と言って、ベンチに降格されます。厳しい世界ですね。
ただ、スポーツはそこで気づかされます。
「なんで俺のパフォーマンスが出てないんだろう。パフォーマンスが安定して出てるやつは、いったい何が違うんだろう」と。長友さんのように優秀なアスリート、心の存在や価値が極めてわかっている彼は、初心に還ろうと。ライフスキルが備わっている、もちろんライフスキルの価値もわかっている。
■ 心に余裕があると結果も出やすい
長友さんは、人間は心で動いているんだから、パフォーマンスを最大化するためには、まず心をやはり整えねばならんというふうに考えたらしいです。
そして、じゃあ自分でいつでもどこでも心を整えられるようにするには、どうしたらいいのかといって、彼が行き着いたのが、
やはりこの感謝。
ただありがたいといつも考えていると、何か余裕が生まれると。
彼の場合は「余裕」という表現をしていますが、ただ「ありがたいなあ」といつでもどこでも、いつでもどこでも、これは考えられるでしょう。「何が」という理由を考えなくていいんだと。
ただ、いつでもどこでも「ありがたいなあ」と考えていると、一見怪しいですが目的は一つ。
自分の心に余裕を生み出す。
すなわち、我々で言えば、フローを生み出すために、ただありがたいと考えるんだと。
外側に理由なんてなくていいじゃないか。自分の心に変化と余裕と、僕らで言えばフローが生まれるのであれば、ただありがたいと考えることは何も怪しいことではなく、いつでもどこでも我々の心に変化を起こせるものすごい脳の機能でしょう。これを使わない手はないんじゃないかというようなことで、ただありがたいと考えながら何か余裕が生まれると。
彼はフローの価値が「視野が広がる」というふうに表現されていますが、それによって視野が広がるので、またプレーの幅が広がる。自分で余裕を作り出すので、まわりのことが気にならなくなってくる。
そしてパフォーマンスが上がってくる。結果がついてくる。「ありがたい」という、ただ考えることからパラダイムシフトを起こした、というような話を、某テレビ番組で特集されていました。
それを見て、なるほど、理にかなっていると。私のこのライフスキルの、ただ考えることの脳の使い方を本当に実践している人なんだなあということがわかりました。
ちょっと慣れていなくて外側とひもづかず、外側に理由がなく、
ただ「ありがたいなあ」と考えるなど難しいと思うかもしれませんが、まずはやってみてください。
ただありがたいなあと考えたら、気分はどうなるか。答えは気分しかないですね。
すなわち、ライフスキルで言う、「感情に気づく力」を磨いていないと、またこのライフスキル一つひとつの醍醐味を享受できないんです。
まずは自分の心にフローな風を吹かせたいわけです。
ただありがたいと考えましょう。
みんなでただありがたいと考えるのです。
■ 「ありがとう」と言うだけでいい
例えば、ただありがたいと考えるライフスキルをちょっと表現するために、先ほどのワークの続きでいいますと、 Fさんに「じゃあ、AからEさんに、何も理由なくていいですから、ただありがたいなあと考えながら、とりあえず『ありがとうございます』『ありがとうございます』と言って、握手でもしてみてください」とやらせます。「気分いいっすね」と絶対言います。
「じゃあもう一回やってみませんか」
「ああ、もう一回。なんぼでもやりますよ」
「AさんからEさんまでに、また『ありがとうございます』『ありがとうございます』と。
理由を探さないでくださいね。この人に『ありがとう』と言う理由があるかどうかって、探さないでくださいね。
もしくは、見返りを選挙のようにしないでくださいね。
握手して『ありがとうございます、この一票をお願いします』。
見返りを期待するのではなくて、自分のために何の理由や根拠もなく、ただ『ありがたいな』『ありがとうございます』と仲間の人と握手してみてくださいね」
それを全員でAさんからEさんまで、繰り返させます。むちゃくちゃ会場はフローになります。
みんな「気持ちいいっすね」と言います。
これがライフスキルの醍醐味で、見返りのあるものでもなく、相手側に理由があるものでもなく、ただただ「ありがたいな」「ありがとう」と考えること。これが我々の心にフローを作り出すライフスキルの極意です。
■ いつでもどこでもフローになれる
ただ「ありがとう」とか、「ありがたい」と考えていることが、自分にとって気分がよくなるという体感を、ぜひ作りだしていただければと思います。
この「ありがたい」と考えることの極意をマスターしていただければ、いつでもどこでも自分をフローな方向へ傾かせられることになるので、ぜひ繰り返しやっていただきたいなと思います。
外国の方は割と「Thank you」を、日本の「ありがとう」という感謝よりも、ライトに使っています。よく外国帰りの人が自分が「Thank you」を使っていたものを「ありがとう」と訳して言っていると、頻発過ぎて何か変な感じになる時があります。
でも、それは彼にとって、彼女にとって、ただ「Thank you」と言っていること、ありがとうと言っていることで気分がいいから言っているというふうに思いますね。
だからライトに「ありがとう」「ありがとう」と、しょっちゅう言っている人がいますよね。
それって「何が?」って理由はあまりなくて、自分の気分がいいから自然に言っているというやつもいます。なので、両方が混在していて当たり前なんですけど、ウエイトレスさんの方とかタクシーで「ありがとう」と言っているのは、
「この人にこうしてもらってありがとう」という部分と、「ありがとう」と言っているほうが俺の気分がいいなという部分とがあるということを、わかっておいてほしいんです。
だから、混在していてもOKです
ライフスキルは、繰り返し意識していくことから始まります。
まず意識しないと、当然思考こそ我々の心を変化させられる重要な価値と考えていますので、意識させる習慣を自分に生み出す宿題を作ったほうがいいですね。
例えば、何かが起こったら「ありがとう」と言うのだと、認知の感謝の練習になってしまいます。
もちろん、この練習をするのもアリだとは思いますが、意識の練習だとすると、1日ただ「ありがたいな」と考えるのを目標設定して何回考えるか。
もしくは、ありがとうと1日理由もなく何回言うかというのを、自分で設定していただく。そうするというのを、ただのシンプルな宿題にしたらよい思います。
自分に負荷してもらうので、10回とか20回とか決めてください。ただ「ありがたい」と考えることを1日10回やりましょう、「ありがとう」と理由なく言うことを20回やりましょう、というようなことをぜひやってください。